日本語習得の能率を上げる日本語学習用ツール

 外国語の習得は、学問的にもビジネス的にも旅行の際にも是非手に入れたい能力だが、別の言語を学ぶということは困難な課題でもある。西洋諸国の多くの言語には少なくともラテン・アルファベットを用いるという一定の類似性があるが、日本語などの東洋諸国の言語にはそのような楽な点はない。この記事では日本語の習得の際のいくつかの障害を乗り越えるのに役立つアプリケーションを3つ紹介する。

 日本語では、漢字、ひらがな、カタカナの3つの文字体系が使用される。そのうちひらがなとカタカナは日本語の音節を表わす文字であり、言葉や発音に対応する漢字がないときに使用される。日本語の書き言葉の大半には漢字が使われていて、ひらがなは動詞の時制や活用などで使われ、カタカナは外国語を表わすためなどに使われる。ひらがなとカタカナには音節を表わす文字がそれぞれ64個あるので覚えるのは大変かもしれないが、その多くは少し異なるだけで似ている。

 日本語を学ぶための書籍はかなり豊富にあるが、本や暗記カードなどの教材は持ち歩くのに不便なこともある。しかしノートPCを持っているなら、Kanatest 0.4.2、TangoBlaster 0.7.2、Langdrillを活用することでいつでもちょっとした学習をすることができる。

 上記のどのプログラムを使用するのにも日本語のフォントが必要となるが、日本語フォントを入手して画面に正しく表示させるには骨が折れることもある。TangoBlasterのウェブサイトには無料のRicohフォントへのリンクがある。TangoBlasterにはどのフォントを使用するのかを設定するためのオプションがいくつかあるが、フォントは前もって入手しておく必要がある。

 ひらがなとカタカナを指す言葉である「仮名」から名前が付けられている「Kanatest」は簡単な暗記カードプログラムだ。カタカナまたはひらがなの文字が表示されるので、ユーザは「ローマ字」と呼ばれるラテン・アルファベット表記を入力する。仮名は音節をベースとしたものであるため、答えは1個の母音と2個以内の子音から成る。ローマ字表記には、ヘボン式訓令式という2つの表記法がある。正しい答えを入力すると、プログラムは現在の仮想暗記カード集からそのカードを抜く。間違った答えを入力すると、プログラムは赤色の文字で正しい答えをしばらく表示し、そのカードは仮想暗記カード集に含まれたままとなる。なお文字はランダムに表示されるので、答えを順番に覚えておくことはできない。またKanatestは正解数と、テストした文字に関してユーザが正解するまでに必要とした回数の統計を取ってくれるので、その結果を参考にして設定を変更することで、特に覚えにくかった文字を集中的にテストすることができる。Kanatestは、堅固で生産的な学習用ツールだ。

漢字を習得する

 漢字の習得は、ひらがなとカタカナの習得に比べるとより難しい。JLPT(Japanese Language Proficiency Test)には4つのレベルがあり、基礎レベルであるLevel 4では生徒は103個の漢字を覚えていなければならない。ビジネスレベルの日本語コミュニケーションとして多くの企業が要求するLevel 2では、生徒はさらに1,307個の漢字に精通している必要がある。

 TangoBlasterは漢字学習用ツールで、ひらがな/カタカナ用のKanatestに似ている。TangoBlasterはJavaのアプリケーションであり、使用するためにはJava 1.6が必要となる。漢字と漢字の組み合わせは何千通りもある。TangoBlasterでは学習に使用することができる漢字のリストを得るための方法がいくつか用意されている。例えば、漢字のリストは無料の英日辞書である「EDICT」から作成することもできる。あるいは、漢字、ひらがなで書いた読み、英語での意味を記述したCSVファイルから漢字のリストをインポートすることもできる。またTangoBlasterでは、「チャンク」と呼ばれている、より扱いやすい小グループに漢字リストを分割することもできる。その場合TangoBlasterは、ユーザが一つのチャンクを完了したら、リストから新しいチャンクを読み込む。

 TangoBlasterのパッケージには、L1からL4までの名前がついたファイルがあるのだが、これはおそらくJLPTのレベルに対応しているものだと思われる。残念ながら開発者は文書をあまり用意していないので、これらのファイルの出所は不明だ。各ファイルを試してみたところ、L4が最もやさしくL1が最も難しいということが分かった。また各ファイルに含まれている漢字の数もだいたいJLPTのレベルに対応している。

 TangoBlasterは、勉強する漢字のリスト以外についてもカスタマイズ可能であり、何についてテストを行なうかを選ぶことができる。例えば各漢字には、漢字の文字自体、ひらがなで書いた読み、英語の意味の3つの情報が表示されるのだが、その中の一つの値を表示して、残りをユーザが埋めるというように設定することができる。ただしKanatestとは異なりTangoBlasterでは、答えた内容が正しいかどうかの判断はユーザが自分で行なう。したがって例えば漢字の文字だけを表示させるように設定しておくと、TangoBlasterが漢字と2つの空欄を表示する。ユーザは答えを考えた後、「Show(表示)」をクリックする。するとプログラムが空欄を埋める。この方法はJLPTで使用されている方法に近いものになっている。TangoBlasterでは、テストの進捗状況がテスト画面のいちばん上に示されていて、現在表示されている漢字がチャンクの中の何番目のものなのかと、チャンクに含まれている漢字の数と、現在テスト中のリストに後いくつの漢字が残っているのかを知ることができる。

 漢字を勉強するのは有益だが、コミュニケーションのために日本語を書いたり話したりする方法として漢字を使うのは難しいかもしれない。そこで漢字の習得の前にまずは、ひらがなで書かれた基本的な語彙を集中的に勉強するというのも良いかもしれない。そのような場合には、Langdrillを使うと良い。Langdrillの各レッスンは「曜日」といったようなカテゴリーに分類されている(ただし「第15回」という分かりにくい名前が付いているものもある)。Langdrillにはフレーズが含まれているが、文にはなっていない。Langdrillを使うには、実行するレッスンと、英語表示にするか日本語表示にするかを選ぶ。通常はユーザはいくつかの選択肢から答えを選ぶ形式で答えるが、選択肢から選ぶのではなく自分で答えを入力するように設定することもできる。ただし後者の方法にすると、単語が答えと正確に一致しなければならないのが厄介だ。例えば週の最初の曜日を表わす言葉の答えは「Sunday」と入力しなければならず「sunday」では誤答になる。曜日の名前については大した問題ではないが、中にはこれによって非常に不便を感じるフレーズもある。とは言え全体的には、Langdrillは簡単なフレーズと日常的な語彙を学ぶのにかなり優れたツールだ。

 以上のツールは便利な基礎的暗記カードシステムであり、これらを使うことによってユーザは、たくさんの余分な教材を持ち歩いたり、既成の暗記カードを買ったりする必要がなくなる。とは言え、このようなツールには今のところはできないこともかなりある。特にLangdrillは文法的な練習をもっと増やしても良いと思われるが、開発はどうやら終了しているようで、2001年以来新版はリリースされていない。また、日本語や日本語と同様の文字を使用する言語は非常に視覚的であるため、James W. Heisigによる「Remembering the Kanji」と呼ばれる方法のように、絵と文字を関連付ける勉強法も人気があり、この方法は仮名についてもよく行なわれているが、このような習得方法は今回紹介したどのツールでもサポートされていない。そのようなことを考慮すると、Kanatest、TangoBlaster、Langdrillは、他の勉強方法を補完するものとしての利用に最適なツールであり、これらのツール自体が非常に包括的であるわけではない。とは言え、どのプログラムも特定の目的には非常に役に立つ。

Linux.com 原文